【名局鑑賞】第15回朝日杯将棋オープン戦 本戦トーナメント佐藤(天)ー糸谷戦

角換わりその他

今回は、2022年1月25日に行われた第15回朝日杯将棋オープン戦 本戦トーナメント佐藤天彦九段対糸谷哲郎八段をみていきます。
今回も棋譜利用の許可をくださった主催者様に感謝申し上げます。

主催:朝日新聞社、日本将棋連盟

先手:佐藤天彦九段
後手:糸谷哲郎八段

初手から以下

▲2六歩 △3四歩 ▲7六歩 △8四歩
▲2五歩 △3二金 ▲7八金 △8八角成
▲同 銀 △2二銀 ▲4八銀 △3三銀
▲3六歩 △6二銀 ▲3七銀 △8五歩
▲7七銀 △7四歩 ▲1六歩 △9四歩
▲4六銀 △7三銀 ▲9六歩 △1四歩
▲6六歩 △6四銀


戦型は後手の糸谷先生が得意の一手損角換わりを採用。

対して先手の佐藤先生は早繰り銀で対抗しました。

上図以下

▲5八金 △7五歩 ▲6七金右 △7六歩
▲同 銀 △8六歩 ▲同 歩  △同 飛
▲8七歩 △8二飛 ▲7四歩


▲5八金では▲3五歩と先手から仕掛けるのも有力。
また、▲6七金右では▲7五同歩もありました。

▲7四歩は次に▲6五歩をみた手ですが、単に▲6五歩として厚みで戦うのも有力でした。

上図以下
△5四歩 ▲6五歩 △5三銀 ▲6八玉
△7二金 ▲7七桂 △4一玉 ▲3五歩
△同 歩 ▲同 銀 △3六歩 ▲4六角
△5五角 ▲同 角 △同 歩


△5四歩は銀の退路を作って自然にみえましたが、作戦負けを招く手になってしまいました。
代えて△5四角と積極的な姿勢をみせるのが優りました。

本譜は先手が好形を築くことに成功しリードを奪いました。

上図以下
▲7五角 △4二角 ▲3四歩 △2二銀
▲2六飛 △8三金 ▲3六飛 △7四金
▲6六角 △5四銀


▲7五角は盤上を制圧する好打。

後手は△8三金~△7四金と力強く金を繰り出していき反撃に転じます。

上図以下
▲7五歩 △8四金 ▲8六歩 △7四歩
▲同 歩 △7五歩 ▲8五銀 △8三金
▲4六銀 △8四歩


▲7五歩~▲8六歩は受ける展開をいとわない佐藤先生らしい組み立て。

後手は△8四歩と銀を捕獲しましたが‥

上図以下
▲5五銀 △4五銀 ▲3五飛 △3四銀
▲同 飛 △8五歩 ▲5四銀 △3三角
▲7五角 △8六歩 ▲6三銀成 △5一歩


▲5五銀と天王山に銀を出るのが当然ながら厳しい一着。

△4五銀~△3四銀は銀を取られる地点を変えて紛れを求めた手となります。
しかし、▲5四銀と上がるのが絶好で。先手好調が続きます。

上図以下
▲6二銀 △8七歩成 ▲同 金 △4二銀
▲8五歩 △4四角 ▲7三歩成 △同 桂
▲同銀成 △同 金 ▲同成銀


▲6二銀は飛車の横利きを消して大きな一手。

後手も△4四角と攻防に利かしましたが、▲7三歩成と逆サイドから崩していくのが冷静な対応でした。

上図以下
△7四歩 ▲9七角 △9二飛 ▲7六金左
△3五歩 ▲5六桂 △3三銀左 ▲4四桂
△3四銀


△7四歩は取ってしまうと飛車取りが無くなってしまいますが、▲9七角と角を逃げておくのが正着。

△3五歩で飛車が包囲されてしまいましたが、▲5六桂が用意の切り返しで駒の取り合いに持ち込みます。

上図以下
▲6三角 △5二銀 ▲同桂成 △同 歩
▲8四歩 △5五桂 ▲6六金直 △2八飛
▲7九玉


▲3二桂成と金を取れるところで▲6三角から迫っていったのがプロらしい手順。

しかし、▲6六金直は本局唯一の先手のミスといってもいい手で、後手は△2八飛から肉薄していきます。

上図以下
△9五歩 ▲6四角 △2九飛成 ▲7八玉
△3八龍 ▲8七玉 △9六歩▲7四角成


△9五歩では先に△2九飛成と王手をかけて先手の態度を聞きたかったところ。
本譜のように▲7八玉なら△9九竜がありますし、▲8八玉ならそこで△9五歩で端歩の厳しさが段違いに変わっていました。

本譜は▲6四角から後手の攻めをうまくかわし、先手勝勢となっています。

上図以下
△7五歩 ▲9二馬 △同 香 ▲9一飛
△5一桂 ▲9二飛成 △7六歩 ▲同 玉
△8八龍 ▲8七金 △4九角 ▲8六玉
△9九龍


△7五歩は思わず取ってしまいたくなる歩打ちですが、▲9二馬から金を取らせている間に寄せを決めにいくのが確実に勝利へ近づく手順でした。

上図以下
▲5四香 △5三香 ▲6一銀 △3一玉
▲5二銀成 △9七歩成▲同 金 △8九龍
▲8七金 △6七桂成 ▲5三香成 △2二玉
▲4二成香 △3三金 ▲5一成銀 △2五銀
▲4三成香 △1三玉 ▲3三成香 △同 桂
▲2二銀 △2四玉 ▲3三銀不成 △同 玉
▲4五桂
まで159手で先手の勝ち

▲6一銀で後手に適当な受けがなくなり、以下後手も延命を図りましたが着実に寄せていった先手の制勝となりました。

糸谷先生は様々な手で逆転を狙っていきましたが、先手の丁寧な指しまわしが光った佐藤先生の好局でした。

将棋盤

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