令和4年に入ってホットな戦型になっている角換わり相腰掛銀の▲9五歩型。
以前は先手に端の位を取らせるのは趣向の域だったと思いますが、後手番でも攻めていきたいという思想から徐々に採用率が高まっているのだとみています。
開始図以下
▲7九玉(第1図)
後手は先攻したいがために端を受けなかったわけですから、先手も仕掛けに備えた手を指したいところ。
具体的には▲7九玉か▲3八金が有力とみられています。
▲7九玉は後手の玉引きに合わせた自然な手。
△6五桂と跳ねられた際に▲6八銀と引く余地も作っています。
▲3八金は次に▲4九飛をみつつあえて玉を引かないことにより△6五銀からの縦の攻めに対して右辺へ逃げやすくしています。
つまりは、△6五桂と△6五銀、どちらを緩和したいかによって先手は手を変えることになります。
第1図以下
△6五銀▲5五銀△4三角(第2図)
さきほども触れましたが、△6五桂には▲6八銀を用意しているのが▲7九玉の効果。
ただし、
△7五歩▲同歩△6五桂
はプロの実戦例もあり有力です。
以下、
▲6八銀△8六歩▲同歩△同飛
▲8七歩△8一飛
が想定された進行で、そこで先手がどう指すかということになります。
本譜△6五銀には▲5五銀の一手とみます。
▲6五同銀は△同桂で△7七桂成と△4七銀の両狙いが受からず後手有利。
▲4七銀と引くのも△5四銀で千日手模様にされて先手面白くないです。
第2図以下
▲6六歩△7六銀▲同銀△同角
▲6八玉(第3図)
第2図は手の広いところで、攻めるなら1~4筋どれを突いても有力でしょう。
また、間接的に飛車を狙う▲1八角も有力。
▲3五歩と突き捨ててから角を打つ変化も考えられます。
そもそも突き捨てにおとなしく応じてくれるかも微妙なところで、△7六銀とすぐ突っ込んでくる手も読まなければならずここだけで分岐は非常に多いのです。
▲6六歩は相手の攻めを受け止める堂々とした手。
第3図まではほぼ一本道となります。
第3図以下
△7五歩▲4五歩△5四歩▲6四銀
△8六歩▲同歩 △6七歩▲7七玉(第4図)
第3図では
△8六歩▲同歩△8五歩
と十字飛車を狙った将棋も指されていますが、▲7七金と角の態度を聞いてどうか。
以下△4三角と引けば▲4五歩あるいは▲2四歩から激しい攻め合いとなります。
また、△3五歩も有力なのですが、▲4七角等と角を打つ手と交換になって△3六歩に▲同角が飛車当たりになるため微妙なところです。
本譜△7五歩は不安定な角を支える本手。
△5四歩では△4五同歩と指された実戦もあり、▲4五同桂と跳ねて先手が調子いいように見えて△4七歩の切り返しがあってこれも有力です。
△6七歩に対して▲同金は△8六飛が受けにくくなりますので▲7七玉の一手となります。
第4図以下
△6八銀 ▲8八玉△5九銀不成▲7五銀
△4八銀不成▲7七金△3七銀不成▲7六金(第5図)
△6八銀に対して▲同金と取るのは、
△同歩成▲同玉△8六飛
で後手よし。
▲8八玉の一手となります。
△5九銀不成は先手の飛車のラインに入っていますが、▲同飛には△6八歩成とやはり△8六飛をみて後手よし。
▲5八銀と寄っても△6八歩成が厳しいことに変わりはありません。
先手は適当な受けがないため、▲7五銀から角の捕獲にいく一手。
後手も角を逃がす手がないため、取り合いは必至となります。
第5図以下
△3八銀不成▲2八飛 △2七金▲7四歩
△2八金 ▲7三歩成△同金 ▲7四歩(第6図)
第5図では△2二玉や△6八歩成も有力ですが、遊び駒になりそうな銀をさばく△3八銀不成が最も価値が高い手とみます。
△2八金ではここでも△2二玉が有力で、▲6四角の先受けにもなっているため本譜でダメならこう指したいところです。
▲7三歩成では狙いの▲6四角もありますが、▲7三歩成の瞬間に暴れられる公算が高いです。
第6図以下
△7二金▲6四角△2二玉 ▲7三歩成
△同金 ▲同角成△6八歩成▲6三角
△7九飛▲8七銀(結果図)
△7二金まで進めてから▲6四角が細かい芸。
▲7三歩成とした時に金が6二にいると手抜かれやすいのですが、▲7二とで金が取れれば飛車取りになるのが大きいです。
先手がうまく組み立てて進められているようですが、△6八歩成~△7九飛も厳しい攻めでバランスがとれています。
結果図以下は後手がどう攻めをつなげるかという将棋。
△8三飛▲同馬△7一桂
はハッとする手ですが、▲4一角成として次に飛車を打ちおろす手が絶好となるため先手よし。
△8三桂は有力で、▲8一角成と取り合いにいくか▲8四銀と素朴に受けるかのどちらかになりそう。
△8四桂もあるところで、▲8四同銀△同飛で多少強引にでも銀を手に入れて△7八銀を張りつく手をみせてどうかということになります。
ある程度の道ができあがってきた▲9五歩型。
今後も開拓が進んでいくのか別の路線へ流行りが移っていくのか注目していきたいところです。