【名局鑑賞】東北出身のプロアマ対決!第16回朝日杯将棋オープン戦 一次予選・小山ー岡部戦

今回は、2022年7月9日に行われた第16回朝日杯将棋オープン戦 一次予選・小山ー岡部戦をお送りします。
主催者様には今回も掲載の許可をいただきまして感謝申し上げます。

主催:朝日新聞社、日本将棋連盟

先手:小山怜央 アマ
後手:岡部怜央 四段

先手の小山アマは岩手県出身。
奨励会在籍経験がないアマ強豪として知られています。

後手の岡部四段は山形県出身。
今年度からプロ入りした若手棋士です。

両者の下の名前が同じということから、「レオレオ対決」とも呼ばれていました。

初手から以下
▲2六歩 △8四歩 ▲2五歩 △8五歩
▲7六歩 △3二金 ▲7七角 △3四歩
▲6八銀 △7七角成▲同 銀 △2二銀
▲3八銀 △3三銀 ▲4六歩 △6二銀
▲7八金 △7四歩 ▲4七銀 △4二玉
▲3六歩 △7三桂 ▲6八玉 △6四歩
▲9六歩 △1四歩 ▲1六歩 △6三銀
▲9五歩 △8一飛

戦型は角換わりに。
小山アマが得意としており、岡部四段が受けてたったというところです。

△6三銀と9筋の端歩を受けなかったのは趣向ですが、類型が今年多く指されているので定着する可能性も高いです。

先手は堂々と▲9五歩と位をとります。

上図以下
▲5八金 △6二金 ▲7九玉 △5四銀
▲5六銀 △3一玉 ▲4七金 △4四銀
▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △5八角

角換わりでは▲4八金型(△6二金型)が近年は定番となっているのですが、小山アマは▲5八金型を好んでいる節があります。

△4四銀は後手番ながら動きをみせた手で、△5五銀左と銀をぶつける狙いを秘めています。

▲2四歩はさりげない一歩交換にみえますが、△5八角のすきが生じているため決断を要する一手でした。
ただし、まだ前例のある局面ではあります。

上図以下
▲1五歩 △同 歩 ▲3七桂 △2三歩
▲2九飛 △1六歩 ▲1四歩 △6五銀
▲4八金 △3六角成

上図では▲3八角と指された前例もあるのですが、△6五桂から攻め立てられて後手ペースとなります。

本譜は1筋を絡めながら足早に攻めていく積極策。
角を取りに行くのは場合の手段とみています。

後手もただ手をこまねいているわけもなく、△6五銀と銀をぶつけて局面を動かしにいきます。

上図以下
▲4五歩 △3三銀 ▲2五桂 △2四銀
▲5五角 △1四香 ▲4四歩 △同 歩
▲同 角 △4一飛 ▲5五銀 △2五馬

上図から▲4五歩と銀を引かせる方針をとったのですが、代えて▲4五銀から激しい将棋に持ち込むべきだったかもしれません。

本譜は▲5五角に期待したのですが、△1四香と指されると取れるものがなく攻めが空を切っています。

△4一飛も好便なのですが、▲5五銀がさすがのバランス感覚で簡単には土俵を割りません。

上図以下
▲4二歩 △同 飛 ▲2五飛 △同 銀
▲5一角 △5九飛▲8八玉 △5二金
▲7三角成

▲4二歩の焦点の歩が狙いの一手。
何で取るかで大きく展開が変わるところで、△4二同玉とじっくり面倒をみる指しかたも有力でした。

本譜は△4二同飛と応じたため、飛車切りから▲5一角が入る格好に。
後手はもちろん織り込み済みで、相手の注文に乗っても問題ないと踏んでいます。

上図以下
△8六歩 ▲同 銀 △7六銀 ▲7四馬
△8五歩 ▲同 銀 △同 銀▲同 馬
△7七歩 ▲同 桂 △7六歩

△8六歩はいかにも筋という攻めで、▲同歩なら△8七歩で飛車が生きる展開となります。
本譜も△7六銀とすりこんでから△8五歩と銀交換を迫るのが好判断で、着実にリードを拡大しています。

△7六歩では△8四歩と馬に働きかけるのも有力。
本譜でも悪いことはないのですが、先手から思わぬ反撃が飛び出しました。

上図以下
▲3三歩  △同 桂 ▲4五桂 △4一桂
▲3三桂成 △同 桂 ▲4五桂 △4一桂
▲3三桂成 △同 桂 ▲4五桂

上図では▲2二歩も考えられるところですが、次に▲2一歩成とできてもさほど厳しくないため手抜かれる公算が高いのでやりにくいかもしれません。

本譜▲3三歩には△同桂と取るくらいですが、そこで▲4五桂と打ったのが小山アマ渾身の勝負手でした。
タダだからと△4五同桂と応じてしまうのは、▲3三歩から殺到されて後手が困ります。

△4一桂と受けましたが、▲3三桂成から千日手模様に。
2回…3回…と同一局面になり、後手は打開すべきかどうか決断が迫られます。

上図以下
△4三金右 ▲5三桂成 △7二飛 ▲7三歩
△同 飛▲6四銀 △4四金 ▲7三銀不成
△7七歩成 ▲同 玉 △2二玉

△4三金右と受けかたを変えて打開しましたが、▲5三桂成と踏み込んでくることは目に見えていたためどうだったか。
代えて△8九銀と受けずに切り返していれば後手は優勢を維持できていたと思われます。

△7三同飛では先に△7七歩成を利かしてどうか。
▲同玉なら△7三飛と手をもどした手が王手になるのが大きいです。

本譜は▲6四銀が間に合う格好となり、角が自陣にも利いて一石二鳥。
勢い飛車角交換となりましたが、先手玉は容易に捕らえられる形ではなくこの辺りで形勢が逆転しています。

上図以下
▲4一馬 △3一銀 ▲4二銀 △1三玉
▲3一銀不成 △同 金 ▲同 馬 △2四玉
▲2六歩 △3六銀 ▲1一飛 △2一桂

▲4一馬は次に▲3二馬を狙っています。
△3一銀と受けるくらいですが、▲4二銀と噛みつけば部分的に受けのない格好です。

よって△1三玉~△2四玉と上部へ逃げ出すくらいですが、▲2六歩と乱してから▲1一飛と飛車を打ちおろすのが好手順となります。

△2一桂は▲1三馬を消す犠打。
こうした悪いながらも相手の狙いを消して自分から崩れない指しかたは参考になります。

上図以下
▲1六香 △1三歩▲2一飛成 △1六香
▲1三馬 △1五玉 ▲2三馬 △2六玉
▲3三馬 △2五歩 ▲4四馬 △3五角
▲5五馬
まで131手で先手の勝ち

▲1六香は取ってくれれば1五に金銀を打つスペースが空くため寄せやすくなります。

後手は△1三歩と飛車の利きを遮断しますが、そこで▲2一飛成がうまい組み立てとなります。
飛車のラインがずれてしまっていますが、それでも▲1三馬が有効になっておりこれが決め手に。

取ると▲1五金としばってほぼ受けなしなので△1五玉と上部へ脱出を図りますが、▲2三馬から駒を取りながら迫っていくのが着実な攻め。

受けても一手一手といった展開となり、▲5五馬をみて岡部四段が投了。
小山アマの勝利となりました。

岡部四段が終盤までリードを保っていましたが、小山アマの▲3三歩~▲4五桂の勝負手が実り逆転に成功。
アマチュアの底力を垣間見た一局となりました。

将棋盤

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