【名局鑑賞】第13回朝日杯将棋オープン戦本戦・深浦ー豊島戦

△7三銀急戦

今回は、2020年1月18日に行われた第13回朝日杯将棋オープン戦本戦、深浦ー豊島戦をお送りします。
両者の秘術を尽くした応酬をお楽しみください。
今回も掲載の許可をくださった主催者様に感謝申し上げます。

主催:朝日新聞社、日本将棋連盟

先手:深浦康市 九段
後手:豊島将之 竜王・名人

初手から以下

▲7六歩 △8四歩 ▲6八銀 △3四歩
▲7七銀 △6二銀 ▲2六歩 △7四歩
▲2五歩 △3二金 ▲7八金 △7三銀
▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △8五歩
▲3八銀 △4一玉 ▲2八飛 △2三歩
▲2七銀


戦型は先手矢倉に対して後手が△7三銀から急戦を目指します。

先手はただ受けるのではなく、▲2七銀と棒銀で反発したのが深浦九段の趣向。
早くも力戦の将棋となりました。

上図以下
△4四角 ▲6六銀 △8六歩 ▲同 歩
△同 飛 ▲8七歩 △8五飛 ▲2六銀
△2二銀 ▲3六歩 △2四歩 ▲6九玉
△1四歩 ▲5六歩 △6四銀 ▲3七銀
△2三銀 ▲4六銀 △5四歩 ▲7九角


△4四角は▲3六銀に△3三桂を用意した手。
先手も目先を変えて▲6六銀と後手の角へ働きかける手をみせます。

△8五飛と狙いを消されては先手もうかつに踏み込むことはできず、じっくりとした戦いとなります。

上図以下
△6二角 ▲3五歩 △同 歩 ▲7七桂
△8二飛 ▲3五銀 △7五歩 ▲3三歩
△同 桂 ▲3四歩 △3五角 ▲同 角
△3四銀 ▲2四角 △2三歩 ▲4六角
△7六歩 ▲6五桂 △5五歩 ▲2四歩
△同 歩 ▲同 飛 △2三銀


△6二角は▲3五歩を緩和した手。
代えて△7五歩と積極的に攻めていくのも有力でした。

本譜△7五歩に対して▲同歩と応じるのも有力ですが、▲3三歩から厳しく迫っていきます。

△2三銀では△2三銀打やいきなり△7七銀も考えられるところ。
後手が節約して受けたことにより、この後強襲を招くことになりました。

上図以下
▲6四飛 △同 歩 ▲5三桂不成 △3一玉
▲6一桂成 △7七銀▲5三角 △2一玉
▲7七銀 △同歩成 ▲同 金 △7三飛
▲2四歩 △同 銀 ▲同 角 △7七飛成


▲6四飛の飛車切りから踏み込むのが鋭い攻め。

△7三飛と角金両取りをくらってしまいますが、下図は角2枚が後手玉を確実に追い詰めており先手がリードを広げています。

上図以下
▲4一銀 △6八銀 ▲5八玉 △5七金
▲同 角 △同銀成 ▲同 玉 △3一歩
▲3四銀 △5六歩 ▲4六玉 △5七歩成
▲2三歩 △1三角 ▲3五銀 △6七龍


▲4一銀では▲6八金と手を戻すのも有力なところ。
本譜は△6八銀から2四の角を消されるのが少し面白くないところです。

▲3五銀では次に△6七龍がくるのは目に見えているので、▲3六玉とかわしておくのも有力でした。

本譜は下図で寄せが見えていればいいのですが‥

上図以下
▲3二銀不成 △同 飛 ▲3六玉 △4七と
▲3三銀成 △5六龍 ▲2七玉 △2六歩
▲同 銀 △3六銀 ▲1八玉 △3三飛
▲2二銀 △同 角▲同歩成 △同 玉
▲2三歩 △同 飛 ▲3二金 △1三玉
▲2五桂 △同 銀 ▲3五角 △2四歩
▲3一角成 △2二銀 ▲同 金 △2七銀
▲同 玉 △2六銀 ▲同 角


▲3二銀不成では▲6二成桂と飛車の横利きを遮断すれば後手玉に詰めろがかかっており明快でした。

▲3六玉と手を戻さなければならないようでは先手変調で、△5六竜から5三の角を抜かれていたら形勢は混沌としていました。
本譜は後手が△4七とから攻めを重視してきたため、難解ながら再び先手が優位に立ちました。

上図以下
△1五桂 ▲同 角 △3六銀 ▲1八玉
△1五歩 ▲2六金 △2二飛 ▲2八歩


△1五桂では△2六同竜~△4四角と攻防に打っていればまだまだ難しい将棋でした。

しかし、▲2六金がリスクのある手で、単に▲2八歩としたいところでした。

上図以下
△4五角 ▲3三銀 △3七銀成 ▲2七銀
△2六龍▲2二馬 △1四玉 ▲2三銀
△同 角 ▲同 馬 △同 玉 ▲2一飛
△3三玉 ▲2二角 △3四玉▲3一飛成
△4五玉 ▲3七桂 △同 と ▲5五金
△4六玉 ▲3八桂 △5七玉 ▲2六桂
△3三歩▲同 龍 △2五桂 ▲3七龍
△同桂成 ▲5六金 △同 玉 ▲6六飛
△4五玉 ▲4六銀 △5四玉▲5五角成
△5三玉 ▲6四馬 △5二玉 ▲3七銀
△1六歩 ▲7四馬 △4二玉 ▲6二飛成

まで179手で先手の勝ち

△4五角では△3七と指していれば勝負はどう転んでいたか分かりませんでした。
詰めろがかかっているため先手は3八に金か銀を打つことになりそうですが、そこで△4五角と打っていれば難しかったです。

以下も後手玉が宙を泳ぎましたが、先手は逆転を許さず押し切りました。

いつ終わってもおかしくない将棋でしたが、たがいに死力を尽くした長手数の熱戦でした。

将棋盤

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