【名局鑑賞】第79期順位戦A級2回戦豊島将之竜王対菅井竜也八段戦

三間飛車その他

今回は、2020年9月15日に行われた第79期順位戦A級2回戦、豊島将之竜王対菅井竜也八段戦について書いていきます。
深夜1時過ぎまでおよんだ超手数の激闘をお楽しみください。
棋譜の利用許可を下さった主催者様に感謝申し上げます。

主催:毎日新聞社・朝日新聞・日本将棋連盟

先手:豊島将之 竜王
後手:菅井竜也 八段

初手から以下
▲2六歩 △3四歩 ▲7六歩 △4四歩
▲4八銀 △9四歩 ▲9六歩 △3二飛
▲2五歩 △3三角▲6八玉 △4二銀
▲7八玉 △6二玉 ▲5六歩 △7二銀
▲5七銀 △4三銀 ▲7七角 △7一玉
▲8八玉 △5二金左 ▲5八金右 △8二玉
▲6六歩 △6四歩


戦型は先手の居飛車に対して後手が三間飛車を採用。

豊島竜王の持久戦模様に対して菅井八段はシンプルに美濃へ囲っていきます。

上図以下
▲8六角 △6三金 ▲9八香 △7四歩
▲9九玉 △8四歩 ▲8八銀 △7三桂
▲7九金 △8三銀 ▲6八金右 △7二金
▲7八金寄 △4五歩▲3六歩 △4二飛
▲5九角


▲8六角はちょっとした揺さぶりで、△6三金と形を限定させてから駒組みに戻ります。

そこから居飛車穴熊対銀冠へと発展。
AIによって序盤が更に整備されている現代では珍しい形になりました。

上図以下
△1四歩 ▲1六歩 △4一飛 ▲2六角
△1二香 ▲4八角 △5四銀▲3七角
△9二香 ▲6七金 △4三銀 ▲7八飛
△4四銀 ▲7五歩 △同 歩 ▲同 飛
△7四歩▲7八飛 △5四歩


△4一飛~△9二香は、場合によっては△9一飛から地下鉄飛車から端攻めをみています。
先手は▲6七金と少し形を崩してでも手を作りにいきます。

▲7八飛は居飛車穴熊では常用の攻め筋。
代えて▲6八銀から右銀を自玉へ寄せていくのも有力でした。

上図以下
▲7六金 △5三銀 ▲6八銀 △4四角
▲1八香 △4二飛 ▲2八角 △3五歩
▲6五歩 △同 歩 ▲7五歩 △同 歩
▲同 金 △7四歩 ▲6四歩 △7五歩
▲6三歩成 △同 金▲7五飛 △7四歩
▲7八飛


▲7六金は力強い金上がり。
しかし、▲6五歩は角のラインを生かした攻めですがどうだったか。
金交換には成功しましたが、振り飛車が厚みを生かせる展開で後手が優位にたちました。

上図以下
△8五歩 ▲5五歩 △同 歩 ▲1七角
△5六歩 ▲3五角 △5五角▲5四歩
△同 金 ▲6三金 △4四銀 ▲2六角
△7二金 ▲6四歩 △8六歩


▲1七角~▲3五角はうまいサバキ。

△5五角は角交換を嫌った手ですが、▲5四歩~▲6三金が継続の攻めで混戦へと持ち込みます。

上図以下
▲3七角 △8七歩成▲5五角 △同 銀
▲7二金 △同 銀 ▲8七銀 △6四銀
▲7四飛 △5五角 ▲8八歩 △8三金
▲6四飛 △同 角 ▲3一角


▲3七角とサバキにでましたが、代えて▲7七銀や▲7七飛と素朴に受ける手が優りました。

本譜は△5五同角~△6四銀と手順に銀を玉に近づけることができました。

上図以下
△5二飛  ▲6四角成 △同 金 ▲5三歩
△4二飛  ▲5一角  △3二飛 ▲6二金
△5七歩成 ▲同 銀  △5九飛


△5二飛で△3二飛は
▲7一銀△同玉▲6四角成△同金
▲5三角
が気になるところでした。

本譜▲6四角成は自然にみえて疑問手。
代えて▲4三銀が有力でした。

上図以下
▲6九歩  △7一歩 ▲5二歩成 △5七飛成
▲5三銀
 △6三金 ▲7二金  △同 歩
▲6二銀成 △同 金 ▲同角成  △8一金
▲6一と  △6二飛 ▲同 と  △6六角
▲7七銀  △8六歩


▲6九歩では▲6八銀が部分的な形ですが、△5三飛成と受け切りを目指されて困ります。

しかし、▲5二歩成と攻めあう手は有力でした。
△7九飛成が気になりますが、
▲7二金△同玉▲6二角成△8二玉
▲6八銀△同竜▲7二銀
なら難しい将棋でした。
途中▲6八銀で単に▲7二銀は、△8九竜から詰みとなります。

上図以下
▲6六銀 △同 龍 ▲7八銀 △5七角
▲6八金
△8七銀 ▲同 歩 △同歩成
▲同 銀 △8六歩 ▲8四歩 △同 金
▲7一銀 △同 金 ▲5一飛


上図から▲8六同銀は△8七竜、▲8六同銀直は△8七歩が生じるため危険。
単に▲7八銀は考えられますが、△7七角成として▲同銀には△8七銀、▲同桂には△9七銀とねじ込んでくる手が気になります。

下図まで進んで先手が優位に立ったかと思われましたが、後手に受けの好手がありました。

上図以下
△6一銀 ▲9一角 △8三玉▲5七飛成
△8七歩成 ▲6六龍 △同 歩 ▲5六角
△7四飛 ▲同 角 △同 金


△6一銀の犠打が絶妙な受け。
飛車成りさえなくしてしまえば先手に速い寄せはありません。

しかし、先手も執念の粘りをみせます。

上図以下
▲8六飛 △同 と▲7一と △8一歩
▲同 と △8四玉 ▲8二角成 △6五角
▲8三飛 △7五玉 ▲8六飛成 △同 玉
▲7六歩 △同 玉 ▲9二馬 △7五玉
▲7七金 △6四玉 ▲7六金
△3八飛
▲6八香


▲8六飛はこれぞ順位戦の将棋といった手。
と金を一歩引かせることによって自玉の延命を図ります。

しかし、後手もあわてずに玉の安全を確保しながら指すのが冷静で、形勢は後手が勝勢です。

上図以下
△8八歩 ▲7五歩 △8九歩成 ▲同 金
△8八歩 ▲同 金 △7九銀 ▲8九歩
△8八銀成 ▲同 歩 △7九金▲7八銀
△6七銀 ▲同 香 △7八飛成

まで204手で後手の勝ち

△8八歩と歩を駆使して攻略するのが基本に忠実な寄せ。
最後はズバッと飛車切りが決まって菅井八段の勝ちとなりました。

△6一銀や▲8六飛など、印象的な手が多かった一局。
穴熊相手に銀冠で勝利した価値ある将棋でした。

将棋盤

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