【名局鑑賞】第11回朝日杯将棋オープン戦一次予選、高崎一生六段対森内俊之九段

三間飛車その他

今回は、2017年6月30日に行われた第11回朝日杯将棋オープン戦一次予選、高崎一生六段対森内俊之九段の一戦をご紹介します。
対抗形の力のこもった戦いをお楽しみください。
今回も掲載の許可をくださった主催者様に感謝申し上げます。

主催:朝日新聞社、日本将棋連盟

先手:高崎一生 六段
後手:森内俊之 九段
(段位はいずれも当時)

初手から以下
▲7六歩 △3四歩 ▲7五歩 △1四歩
▲7八飛 △1五歩 ▲6六歩 △6二銀
▲4八玉 △4二玉 ▲3八銀 △3二玉
▲3九玉 △8四歩 ▲6八銀 △3三角
▲6七銀 △2二玉 ▲5六銀 △8五歩
▲7六飛 △3二銀 ▲7七角 △8四飛
▲5八金左 △9四歩


▲7五歩と石田流を明示した手に対して、△1四歩は対局当時から注目されている指しかた。
▲1六歩と受けてきたら相振り飛車にした際に少し得しているという見立てです。

本譜は▲7八飛としたため、△1五歩と端歩を突き越す格好に。
代えて△8八角成~△3二銀と工夫を凝らすのも有力ですが、本局では持久戦に持ち込んで端歩が生きる形を目指しました。

上図以下
▲3六歩 △2四歩 ▲5九角 △2三銀
▲3七角 △3二金 ▲2六歩 △5四歩

▲7七桂 △9三香 ▲2七銀 △5三銀
▲3八金 △4二角 ▲6五歩 △5一金
▲2八玉 △4一金 ▲4八金左 △3一金寄
▲4六歩 △1二香 ▲4五歩 △1一玉

▲3七角と角を転換するのがアマ強豪であった楠本誠二氏が考案された「楠本式石田流」と呼ばれる指しかた。
本家はここから▲1八玉と指しますが、本局では▲2六歩から銀冠に囲いました。

先手としては▲6五銀と揺さぶりをかけてみるのも考えられますが、本譜は▲6五歩としたため長い囲いあいとなりました。


上図以下
▲1六歩 △同 歩 ▲同 銀 △2二金上
▲1五歩 △3三角 ▲2七銀 △9五歩
▲9八香

▲1六歩は端歩の突き越しを逆用してやってみたい手。
先手に香車を持たれると▲8六歩と突かれるのが嫌なので(△同歩に▲8五香)、端は気にせず△2二金上と整備するのが本手といえます。

上図以下
△4四歩 ▲7四歩 △同 歩 ▲9一角成
△4五歩 ▲3七桂 △4四銀 ▲4五銀
△8六歩 ▲4四銀 △同 角 ▲4六飛
△7七角成 ▲4一飛成 △8七歩成

△4四歩に手抜いて▲7四歩として本格的な戦いに。

▲4五銀では▲6四歩と逆サイドから攻めていくのも有力でした。
本譜は▲4四銀からサバキあいを持ち込みますが、△7七角成が桂馬を取って成っているのに対して▲4一飛成が空成りなのは気になるところ。
このサバキをより効果的にするために、▲4四銀と踏み込む前に▲4三歩と態度を聞くのは考えられるところでした。

上図以下
▲2五歩 △9八と ▲2四歩 △同 銀
▲4六馬 △2六歩 ▲同 銀 △2七歩
▲同 玉 △8九飛成 ▲4九歩 △2五歩
▲同 桂 △2三香 ▲1四銀

▲2五歩は自然な攻めにみえますが、自玉の上から攻めているため危険も伴います。
本譜はそのリスクが如実に表れます。

▲4六馬と銀取りをかけた手に対し、△2六歩と受けずに反撃にいったのが鋭い一手でした。
先手玉をつりあげてから△8九飛成が調子のいい組み立て。
更に△2五歩と桂馬を飛ばせてから△2三香が銀取りを受けつつ攻めもみており、後手としてはやりたいことを全部やったような手順となりました。

しかし、先手も▲1四銀と端に不気味な銀を据えて激戦が続きます。

上図以下
△8六龍▲2四馬 △同 香 ▲2三歩
△3五桂 ▲同 銀 △同 歩 ▲2二歩成
△同 馬 ▲2六金 △1四香

△8六竜は底歩の堅陣をかわした柔軟な攻め。

先手は▲2四馬~▲2三歩と厳しく迫っていきましたが、△3五桂がそれ以上に痛いカウンターとなりました。
▲3五同歩には△3六銀と打たれて困りますし、▲1六玉とかわしても△3六竜をみつつ△2五香から崩されてもちません。
本譜▲3五同銀~▲2六金は容易に土俵を割らないプロの受けといえます。

△1四香はスマートに勝ちにいった手で、代えて
△2五香▲同銀引△2四歩
とガリガリ削っていくのも有力でした。


上図以下
▲1二銀 △同 馬 ▲3二龍 △2五香
▲1二龍 △同 玉 ▲2四桂 △2三玉
▲3二角 △3三玉 ▲4三金 △3四玉
▲2五金 △同 玉 ▲3七金左 △1六銀
▲同 香 △1八銀 ▲1七玉 △2七金
▲同金上 △同銀成 ▲同 金 △2八銀

まで124手で後手の勝ち

▲1二銀はハッとする銀捨てで、△同玉には▲1四歩が効果的になるという目論見です。
しかし、△1二同馬と応じて▲3二馬と取らせる代わりに△2五香と切り返したのが好判断。これで後手が一気に勝勢となりました。
先手としては銀捨てに代えて▲3四銀と攻防に打っていれば息の長い戦いになっていたと思います。

本譜は▲1二竜から王手ラッシュをかけますが、後手玉を詰ますには一枚足りません。
最後は△1六銀から手数はかかりますが先手玉は詰み筋に入っており、森内九段の勝ちとなりました。

投了図以下、
▲2八同金には△1九飛▲1八金△3九角、
▲2八同玉には
△3八金▲同玉△4六桂▲2八玉
△3九角▲1九玉△1八歩▲同玉
△1七歩
でいずれも即詰みとなります。

本局はじっくりとした駒組みから一転して迫力のある攻防が続いた見ごたえのある好勝負でした。

将棋盤

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